選び方・調理法
選び方
野生のイノシシは「と畜場法」の検査対象ではないが、食品衛生法に基づく食肉処理業の許可を受けた施設で解体されたものを購入する必要がある。国や自治体の衛生管理ガイドラインに沿って適切に処理を行っている、信頼の置ける認定施設や販売業者から購入することが望ましい。
下処理
野生特有のにおいを感じる場合は、調理前に酒やしょうが、香味野菜などを用いて下味をつけるとよい。臭みを抑えるために湯通しやマリネしてから加熱調理することもある。ただし、捕獲後に適切な血抜きや内臓摘出が行われた良質な肉は、臭みが少ないとされる。
【重要】E型肝炎ウイルスや寄生虫(旋毛虫など)の感染リスクがあるため、生食は厳禁である。必ず中心部まで十分に加熱(75℃で1分間以上、またはそれと同等以上)して調理すること。
保存方法
冷蔵または冷凍で保存する。長期保存の場合は冷凍し、調理の際はドリップの流出を防ぐため冷蔵庫内でゆっくり解凍する。生肉を取り扱う際は、食中毒や交差汚染を防ぐため他の食材と明確に分け、使用した包丁やまな板などの調理器具は直ちに洗浄・熱湯消毒を行うこと。
時期・特徴
国内分布
北海道を除く本州、四国、九州に「ニホンイノシシ」、奄美地方や沖縄諸島などの南西諸島には小型の「リュウキュウイノシシ」が分布する。近年は東北地方などでも分布域が拡大している。
時期
狩猟期である11月中旬から2月中旬頃(地域により期間は異なる)が旬とされ、特に冬場はドングリなどの木の実を食べて厚い脂が乗り、美味とされる。
栄養
部位や時期により異なるが、赤身部分は豚肉と比べ高タンパク・低カロリーであり、鉄分やビタミンB群(特にビタミンB12)、亜鉛などが豊富に含まれる。肉には機能性成分であるアミノ酸(カルノシンやタウリン)が多く含まれるとされる。脂肪部分はオレイン酸やリノール酸などの不飽和脂肪酸の割合が高く、独特の甘みがある。
特徴
特有の風味があることから、料理には味噌や香味野菜を用いたものが多いが、煮込んでも硬くなりにくい特徴を持つ。ぼたん鍋(いのしし鍋)、焼肉、カレー、シチューなどに利用される。加工品として佃煮、ハム、ベーコン、ソーセージ、燻製などもある。
品種・由来
- 品種名:ニホンイノシシ、リュウキュウイノシシ
- 分類:鯨偶蹄目イノシシ科イノシシ属
- 学名:Sus scrofa leucomystax(ニホンイノシシ)、Sus scrofa riukiuanus(リュウキュウイノシシ)
由来
干支を表す際の「い(亥)」は鳴き声を表した擬声語で、古くは「ヰ(ゐ)」と呼ばれた。「しし」は元々「肉」という意味であったが、転じて食用にする獣の意になり、「い」と鳴く食用獣を「いのしし」と呼ぶようになったといわれている。
伝来
日本に古来より生息する在来の野生動物である(家畜化されたものが豚である)。
歴史背景
縄文時代や弥生時代の遺跡から骨が多数出土しており、『古事記』や『日本書紀』にも記載があることから、古くから重要な食料とされてきたと考えられる。仏教伝来以降、獣肉食が表向き禁じられていた時代も「山鯨(やまくじら)」や「薬喰い」と称して食べ続けられた。明治以降は肉食の解禁に伴い大衆化し、第二次大戦後には徐々に商品化が進んだ。
備考
別名「やまくじら」。野生のイノシシと豚の交配種に「イノブタ」があり、イノシシ肉特有の風味が穏やかで、食用として広く流通している。近年は農作物被害を減らす目的もあり、捕獲したイノシシを地域資源(ジビエ)として有効活用する動きが全国的に推進されている。

