選び方・調理法
選び方
肉の色が深みのある鮮やかな赤色で、ツヤがあり、脂肪が少なく筋の少ないものを選ぶ。表面が黒ずんで乾燥しているものや、ドリップ(肉汁)が多く出ているものは鮮度が落ちているため避ける。野生鳥獣の肉(ジビエ)であるため、国や自治体の衛生管理ガイドラインに沿って適切に処理を行っている、食品衛生法に基づく食肉処理業の許可を受けた認定施設や信頼できる販売業者から購入することが望ましい。
下処理
表面の薄い筋膜(シルバースキン)は加熱すると硬くなるため、包丁で丁寧に削ぎ落とす。野生特有の臭みを感じる場合や肉質を柔らかくしたい場合は、調理前に赤ワインや日本酒、香味野菜、香草(ハーブ)などを用いてマリネするとよい。ただし、捕獲後に適切な血抜きや内臓摘出が行われた良質な肉は、臭みが少ないとされる。
【重要】E型肝炎ウイルスや腸管出血性大腸菌(O157等)、寄生虫などの重篤な感染リスクがあるため、生食(刺身、たたき等)やレアでの喫食は厳禁である。妊婦や高齢者に限らず、すべての人に対して必ず中心部まで十分に加熱(中心温度75℃で1分間以上、またはそれと同等以上)して調理すること。
保存方法
水分が多く非常に傷みやすいため、購入後は空気に触れないようラップで密閉し、チルド室などで冷蔵保存してなるべく早く使い切る。長期保存する場合は冷凍し、調理の際はドリップの流出を防ぐため冷蔵庫内でゆっくりと自然解凍する。生肉を扱った包丁やまな板などの調理器具は、交差汚染を防ぐため使用後直ちに洗浄・熱湯消毒を行うこと。
時期・特徴
国内分布
北海道(エゾシカ)、本州(ホンシュウジカ)、四国・九州(キュウシュウジカ)、その他(ヤクシカ、ツシマジカなど)の亜種が日本各地に広く分布する。また、ニュージーランドなどからの輸入鹿肉(飼育シカ肉)も流通している。
時期
狩猟期である秋から冬(一般的に11月中旬〜2月中旬頃、北海道のエゾシカは10月下旬〜3月頃まで等、地域により異なる)が旬とされる。一方で、夏場に捕獲される「夏鹿」も、青草を食べて育ち脂が少なくさっぱりとして美味とされる。近年は農作物被害対策の駆除等もあり、ジビエとして通年流通している。
栄養
他の食肉に比べ水分が多く、高タンパク・低脂肪・低カロリーである。特に鉄分(ヘム鉄)が豚肉や牛肉と比較しても非常に豊富に含まれる。また、カルニチンやタウリン、アミノ酸(カルノシン)、共役リノール酸やビタミンB群なども多く含まれ、栄養価が高い。
特徴
肉は脂肪が極めて少ない赤身肉。肉色は濃い赤色で、加熱すると茶褐色になる。適切な処理がされたものはクセが少なく、柔らかく淡白な味わいとされる。フランス料理では「シュヴルイユ(Chevreuil)」と呼ばれ、秋から冬にかけての高級食材として重宝される。ロースト、ステーキ、カツレツ、カレーやシチューなどの煮込み料理、ハンバーグなどに幅広く用いられる。近年はニホンジカの個体数増加による農林業被害が深刻化しており、捕獲したシカを地域資源(ジビエ)として有効活用する取り組みが全国で推進されている。
品種・由来
- 品種名:エゾシカ、ホンシュウジカ、キュウシュウジカ、ツシマジカ、ヤクシカなどの亜種(輸入肉はアカシカ等)
- 分類:鯨偶蹄目シカ科シカ属
- 学名:Cervus nippon(ニホンジカ)
由来
シカを指す古語である「カ」と、食肉となる獣を意味する「シシ」が合わさった「カノシシ」が変化して「シカ」になったとする説や、『万葉集』の時代から「シカ」という呼称が存在していたなど諸説ある。また、肉の隠語として「もみじ」と呼ばれるが、これは花札の「奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の」という図柄(紅葉に鹿)に由来するとされる。
伝来
日本に古来より生息する在来の野生動物である。
歴史背景
旧石器時代や縄文時代の遺跡から多数の骨が出土しており、古くから重要な食料(狩猟対象)とされてきたと考えられる。『古今和歌集』などでは秋の季語として詠まれている。仏教伝来以降、獣肉食が表向き禁じられていた時代も、猪肉(ぼたん)とともに「もみじ」と称され、健康回復や養生を目的とした「薬喰い」として食べ続けられてきた。
備考
別名「もみじ」。輸入される飼育シカ肉(Venison)は品質が安定しており、レストラン等でも広く利用されている。前述の通り、野生肉の生食は致命的な健康被害を招く恐れがあるため、どのような調理法であっても十分な加熱が必須である。

