選び方・調理法
選び方
水槽内の個体であれば、岩やガラス面に強く吸着しており、触れた際に素早く反応して身を縮めるものを選ぶ。殻の表面にツヤがあり、肉に弾力と厚みがあるものが良品とされる。
下処理
タワシ等を用いて殻と身の汚れ、表面のぬめりを流水で丁寧に洗い流す。塩揉みをすることで余分な水分と雑味を除く手法も一般的である。殻から外す際は、身と殻の間にヘラなどを差し込み、貝柱を切り離す。内臓(ウロ)も食用となるが、砂を噛んでいる場合があるため、調理法に応じて取り除くか慎重に洗浄する。
保存方法
乾燥を防ぐため、湿らせた新聞紙や布巾等で包み、ポリ袋に入れて冷蔵保存する。鮮度が落ちやすいため、生食の場合は当日中に、加熱用でも2〜3日以内を目安に消費するのが望ましい。
時期・特徴
国内分布
北海道南部以南の日本各地に分布するが、主な産地は千葉県、和歌山県、徳島県、高知県などの太平洋岸である。天然物の流通量は減少傾向にあり、市場に並ぶものの多くは台湾等から輸入・養殖される近縁種の「フクトコブシ」である場合が多い。
時期
地域により差があるが、一般的に身が充実し、産卵期を控える5月〜8月頃の初夏から夏にかけてが旬とされる。
栄養
高タンパク・低脂質な食材である。旨み成分であるグルタミン酸のほか、タウリン、ベタイン、アルギニンといったアミノ酸を豊富に含む。また、亜鉛、銅、鉄などのミネラル類、ビタミンB1、B2、Eをバランスよく含んでいる。
特徴
アワビに酷似するが、最大でも殻長7〜8cm程度までしか成長しない小型種である。最も明確な識別点は殻にある呼水孔(穴)の数で、アワビが3〜5個であるのに対し、トコブシは通常6〜9個あり、穴の縁が突出せず平坦である。アワビと比較して肉質が非常に柔らかく、加熱しても硬くなりにくい性質を持つ。コリコリとした食感は控えめだが、身の旨みが強く、小ぶりなため殻ごと調理する料理に適している。
品種・由来
- 品種名:トコブシ(常節)
- 分類:ミミガイ科トコブシ属
- 学名:Haliotis diversicolor aquatilis
由来
常に岩肌に張り付いている様子から「常節(トコブシ)」、あるいは「床伏」の名がついたとされる。高知県などでは、岩をひっくり返すと足早に逃げ隠れる様子から「ナガレコ(流れ子)」の地方名で親しまれている。
伝来
日本近海に古くから自生する在来種である。
歴史背景
江戸時代の百科事典『和漢三才図会』にも記載があり、古くから日本の食文化に深く関わってきた。かつてはアワビの代用とされることもあったが、現代ではその独特の柔らかさと旨みから、煮貝や磯煮などの高級食材として独自の地位を確立している。
備考
主な料理には、旨煮、含め煮、酒蒸し、バターソテー、利休焼きなどがある。特に殻付きのまま煮含める調理法は、本種の肉質を最大限に活かせるため和食の定番となっている。
