選び方・調理法
選び方
全体に銀色の光沢があり、鱗が剥がれずしっかりと付いているもの、身に張りがあり太っているものを選ぶ。目は澄んでおり、ボラ特有の脂蓋(しがい:眼を覆う透明な脂肪の層)が濁っていないものが新鮮である。特に冬の「寒ボラ」は、腹がふっくらと厚みのある個体に脂が乗っている。
下処理
鱗を取り、内臓を除去する。汽水域に生息するため、個体によっては泥臭さを有する場合がある。腹腔内の黒い膜(腹膜)に臭みが残りやすいため、ササラやブラシ等を用いて血合いと共に徹底的に洗い流すことが重要である。メスの卵巣はカラスミの原料として、幽門(胃の出口の筋肉部)は「ボラのヘソ」として珍重されるため、傷つけないよう丁寧に取り分ける。
保存方法
鮮度劣化に伴い臭みが出やすいため、入手後速やかに下処理を行う。三枚におろして水気を完全に拭き取り、ラップで密閉して冷蔵保存する。数日保存する場合は、軽く振り塩をして余分な水分を抜いてから保存すると日持ちが向上する。長期保存の場合は冷凍も可能だが、風味を損なわないよう急速冷凍が望ましい。
時期・特徴
国内分布
北海道以南の日本各地。沿岸域、内湾、汽水域に広く生息し、幼魚期には河川の淡水域まで遡上する。
時期
通年漁獲されるが、最も美味とされるのは10月から2月頃にかけての冬季。この時期のものは「寒ボラ」と呼ばれ、脂が乗り、特有の泥臭さも消失して真鯛に匹敵する味わいになるとされる。
栄養
良質なタンパク質が豊富で、比較的低脂質。脂質にはEPAやDHAなどの多価不飽和脂肪酸を含み、ビタミンB12、ビタミンD、ビタミンEも豊富である。カラスミ(卵巣の塩漬け)は、非常に高いエネルギーとビタミン、脂質を含有する。
特徴
頭部が平たく、円筒形の体型を持つ。成長とともに呼び名が変わる出世魚であり、最終的に「トド」となることから、「とどのつまり(結局のところ)」という言葉の語源となった。白身は弾力があり、冬場は脂の甘みが強い。幽門部は「ヘソ」「そろばん」等と呼ばれ、鶏の砂肝に似た食感で珍味とされる。
品種・由来
- 品種名:ボラ
- 分類:ボラ目ボラ科ボラ属
- 学名:Mugil cephalus
由来
角笛を意味する「法螺(ほら)」に形が似ていることから転じたとする説や、腹が太いことを指す「太腹(ほばら)」から転じた説、泥を掘って餌を食べる様子から「掘る(ほる)」が転じた説など、諸説存在する。
伝来
日本近海の在来種。縄文時代の貝塚から骨が発見されているほか、平城宮跡から「名吉(なよし)」と記された木簡が出土しており、古代より重要な食用魚であったことが裏付けられている。
歴史背景
江戸時代には、ボラの卵巣を用いた「カラスミ」が長崎などの名産として幕府への献上品とされ、三河の「コノワタ」、越前の「ウニ」と並び、天下の三珍味の一つに数えられた。かつては江戸前の代表的な高級魚であったが、高度経済成長期の水質汚染の影響により、一時期は臭みの強い魚としてのイメージが定着した。近年の水質改善や適切な血抜き処理により、再びその食味が評価されている。
備考
出世魚としての呼称(地域差あり):
関東:オボコ → イナッコ → スバシリ → イナ → ボラ → トド
関西:ハク → オボコ → スバシリ → イナ → ボラ → トド
