選び方・調理法
選び方
殻(被囊)の色が鮮やかな朱色から橙色で、表面に光沢があるものを選ぶ。全体がふっくらと丸く膨らみ、触れた際に岩のような強い弾力を感じるものが新鮮である。鮮度が落ちると身が痩せて柔らかくなり、特有の金属臭やアンモニア臭が増す。また、殻の中の液体(ホヤ水)が濁っておらず、透明度の高いもの、異臭がしないものが良品とされる。
下処理
先端にある2つの突起のうち、入水孔(「+」の形)を切り落とし、中のホヤ水をボウル等に受ける。次に、出水孔(「ー」の形)を切り落として殻を縦に切り開き、中の身を取り出す。内部にある黒い塊(消化腺)は苦味や臭みの原因となるため、丁寧に取り除く。取り出した身は、受けたホヤ水、または薄い塩水でさっと洗う。ホヤ水は旨みが凝縮されているため、キッチンペーパーなどで漉してから、身を浸したり出汁として利用したりすると風味が一層際立つ。
保存方法
極めて鮮度劣化が早いため、入手した当日に調理・喫食するのが鉄則である。死後は速やかに自己消化が始まり、独特の臭気が強くなる。保存が必要な場合は、当日中に殻から身を取り出して内臓を除き、水気を拭き取って密閉し、冷蔵庫のチルド室で保存する。2日以上の長期保存を要する場合は、蒸すか茹でるかして加熱してから冷凍保存することが推奨される。
時期・特徴
国内分布
主に東北地方の太平洋沿岸で漁獲・養殖されており、宮城県が全国の生産量の約8割を占める。次いで岩手県、青森県、北海道などで広く流通する。
時期
旬は5月から8月にかけての夏季。この時期のホヤは「夏ホヤ」と呼ばれ、身が厚く充実する。旨み成分でありエネルギー源でもあるグリコーゲンが冬場の約8倍にまで増加するため、一年で最も甘みが強くなる時期とされる。
栄養
高タンパク・低脂肪な食材であり、ミネラルが極めて豊富である。特に味覚形成に関わる亜鉛のほか、鉄分、カリウム、リンを多く含む。また、疲労回復に寄与するタウリンや、ビタミンB12、ビタミンEも豊富。近年では、認知機能への影響が注目されるプラズマローゲンという脂質成分が含まれていることでも知られる。
特徴
脊椎動物に近い進化を遂げた「脊索動物(原索動物)」の一種。甘味、塩味、酸味、苦味、旨味の「五味」をすべて兼ね備える稀有な食材として知られる。その形状から「海のパイナップル」とも称される。ホヤに含まれる不飽和アルコールやアミノ酸の影響により、ホヤを食べた直後に水を飲むと、水が甘く感じられるという独特の性質を持つ。
品種・由来
- 品種名:マボヤ(真鞘)
- 分類:脊索動物門ホヤ綱マボヤ科マボヤ属
- 学名:Halocynthia roretzi
由来
外見が岩に付着して動かない様子が寄生植物のヤドリギに似ていることから、ヤドリギの古名「ほや(火屋)」から名付けられたとする説や、殻の形や色が炎に似ていることから「火焼き(ほやけ)」が転じたとする説がある。
伝来
日本近海の在来種。東北地方では平安時代以前から食されていた記録があり、古くから地域に根差した伝統的な食材である。
歴史背景
かつては産地周辺でしか味わえない鮮度管理の難しい食材であったが、1920年代(大正末期)に宮城県で養殖技術が確立された。戦後の保冷技術と輸送網の飛躍的な向上により、全国の市場へ流通するようになった。独特の風味が強いことから好みが分かれる食材とされてきたが、近年の徹底した鮮度管理により、臭みのない良質な個体が広く親しまれるようになっている。
備考
食用とされるのは主に「マボヤ」だが、北海道や東北北部では殻に突起がない「アカホヤ(Halocynthia aurantium)」も流通する。アカホヤはマボヤに比べて殻が薄く、身が非常に柔らかいのが特徴。
