選び方・調理法
選び方
殻付きのものは、生きていることが絶対条件である。水に入れた際に蓋を固く閉ざしているもの、または角を出して活発に動いているものを選ぶ。死んでいる個体は著しい腐敗臭を放ち、料理全体の味を損なうだけでなく食中毒のリスクがあるため、必ず取り除く。殻に泥や付着物が多いが、殻自体に艶があり、欠けていないものが良質とされる。
下処理
淡水産であるため、寄生虫(肺吸虫など)の中間宿主となる可能性がある。そのため、絶対に生食はせず、中心部まで十分に加熱することが極めて重要である。調理前には、きれいな水に入れて2〜3日ほど置き、泥を吐かせるとともに、殻の表面をたわしなどでこすり洗いして汚れを落とす。また、茹でる際に酒や生姜を加えると、特有の泥臭さを抑えることができる。
保存方法
基本的には生きているうちに調理する。泥抜きをしながら涼しい場所で数日は保管できるが、水が腐らないよう頻繁に交換する必要がある。茹でて殻から身を取り出した状態であれば、ラップに包んで冷蔵で1〜2日、または冷凍で2週間程度の保存が可能。
時期・特徴
国内分布
日本全国の田、池、沼、緩やかな流れの川などに分布する。ただし、農薬の使用や圃場整備による環境変化により、野生の個体数は激減しており、現在は準絶滅危惧種に指定されている地域も多い。
時期
「寒タニシ」と呼ばれる冬から初春にかけてが最も美味とされる。冬眠中のタニシは身が締まり、泥臭さが抜けて旨みが凝縮するためである。また、田植え時期の春から初夏にかけても古くから季節の味として親しまれてきた。
栄養
高タンパクで低脂肪、さらにミネラル分が非常に豊富である。特に鉄分、カルシウム、銅を多く含み、貧血予防や骨の健康維持に役立つ。ビタミンB12も豊富で、滋養強壮に良い食材として重宝されてきた。また、肝機能をサポートするタウリンやベタインも含まれている。
特徴
日本に生息するタニシ科のなかで、最も食用として一般的かつ味が良いとされるのがマルタニシである。殻は丸みを帯びた卵円形で、高さは約4〜6cmに達する。淡水貝特有の強い旨みを持ち、しっかりとした歯ごたえがある。ナガタニシ、オオタニシ、ヒメタニシなどの近縁種も食用にされるが、地域によって利用状況は異なる。
品種・由来
- 品種名:マルタニシ(丸田螺)
- 分類:タニシ科マルタニシ属
- 学名:Cipangopaludina chinensis laeta
由来
田んぼに住む代表的な貝であることから「田の主(タヌシ)」が転訛したという説や、裸足で田に入った際に足を傷つける石のような存在として「田の石(タノイシ)」と呼ばれたことが由来とする説がある。
伝来
日本列島では縄文時代の貝塚から殻が発見されており、古来より貴重な野生のタンパク源として利用されてきた歴史がある。
歴史背景
かつては「田んぼの牛肉」とも称されるほど、農村部における重要な栄養源であった。平安時代の貴族の宴席から庶民の日常食まで幅広く利用され、各地に郷土料理が残っている。戦後は化学肥料や農薬の影響で数が減り、食用としての流通量は激減したが、現在でも一部の地域や高級料亭、郷土料理店で珍重されている。
備考
「ジャンボタニシ」と呼ばれるスクミリンゴガイ(リンゴガイ科)は、外来種でありタニシとは別物である。ジャンボタニシは広東住血線虫などの寄生虫を保有しているリスクが高いため、扱う際はさらに厳重な注意(素手で触れない、徹底した加熱など)が必要である。
