選び方・調理法
選び方
殻付きのものは、口がしっかりと閉じていて、持ち上げた際に重みを感じるものを選ぶ。殻が開いているものは死んでいる可能性があるため避ける。むき身は、身全体にふっくらとした張りがあり、色は透明感のある乳白色で光沢があるものが良い。外周のひだ(外套膜)が黒くくっきりとしており、身が痩せていないことが鮮度の指標となる。また、パック詰めの際は「生食用」と「加熱用」の表記を必ず確認する。これらは鮮度の差ではなく、採取海域の水質や浄化処理の有無による区分であるため、用途に合わせて適切に選択する。
下処理
むき身を洗う際は、海水程度の塩水、または大根おろしや片栗粉を用いて、身を傷つけないよう優しく揉むようにして汚れやぬめりを吸着させる。その後、冷たい真水で手早く振り洗いし、水気をしっかりと拭き取る。加熱用を調理する際は、加熱しすぎると身が縮むため、片栗粉をまぶして旨味を閉じ込めるなどの工夫が有効である。殻付きを剥く際は、貝柱の位置を確認し、殻の破片が身に付着しないよう注意する。
保存方法
鮮度劣化が非常に早く、また食中毒(ノロウイルスや真性コレラ等)のリスクを考慮し、購入後は速やかに冷蔵保存して期限内に消費する。殻付きは乾燥を防ぐため、濡れ布巾をかけて冷蔵庫(5〜10℃程度)で保管する。むき身はパックのまま、あるいは真水に浸さず水気を切って密閉容器に入れ、チルド室で保存する。長期保存の場合は、下処理後に急速冷凍することも可能だが、解凍後は加熱調理に用いるのが望ましい。
時期・特徴
国内分布
日本各地の沿岸に広く分布する。食用として主流な「マガキ」の主な産地は、広島県、宮城県、岡山県、岩手県、北海道(厚岸など)である。一方、夏に旬を迎える「イワガキ」は、山形県、秋田県、石川県などの日本海側や、隠岐諸島(島根県)などで多く採取・養殖されている。
時期
マガキは、グリコーゲンを蓄える秋から冬にかけてが旬とされる。一般に「Rのつかない月(5〜8月)」は産卵期にあたり、身が痩せて味が落ちるとされるが、現在は養殖技術や品種(三倍体ガキなど)の改良により、通年流通も可能となっている。イワガキは産卵が緩やかなため、夏場(6〜8月)に身が厚くなり旬を迎える。
栄養
「海のミルク」と称されるほど栄養価が高い。エネルギー源となるグリコーゲンのほか、良質なタンパク質、タウリン、ビタミンB12などを豊富に含む。特に亜鉛の含有量は食品の中でもトップクラスであり、免疫力向上や味覚の維持に寄与するとされる。また、鉄、銅、セレンなどのミネラル分もバランスよく含まれている。
特徴
世界中に広く分布し、古来より人類が食用としてきた二枚貝である。特有の濃厚な旨味(苦味を伴う甘み)があり、加熱してもその風味は損なわれない。マガキは比較的殻が薄く、養殖が容易であるのに対し、イワガキは殻が非常に大きく厚いのが特徴。食中毒のリスクに関しては、中腸腺(黒い部分)にウイルスが蓄積されやすいため、体調が優れない時の摂取や過度な生食には注意を要する。
品種・由来
- 品種名:マガキ(真牡蠣)
- 分類:イタボガキ科マガキ属
- 学名:Crassostrea gigas(または Magallana gigas)
由来
岩から「かき」落として採取することから「カキ」の名が付いたという説が有力である。「牡蠣」という漢字は、江戸時代にすべてが雄(牡)であると誤認されたことに由来すると言われるが、実際には雌雄同体であり、環境や成長過程で性転換を行う。
伝来
日本近海の在来種。縄文時代の貝塚から大量の殻が出土しており、日本列島において最も古くから食されてきた貝類の一つである。
歴史背景
広島湾での養殖は室町時代から始まったとされ、江戸時代には大阪へ「かき船」が出て賑わいを見せた。世界的には、紀元前のローマ時代から養殖が行われていた記録がある。19世紀には日本のマガキがフランスや北米へ輸出され、現地のカキが病気で壊滅した際の救世主となった歴史があり、現在も世界中で広く養殖されている品種の多くは日本由来のマガキ系統である。
備考
欧米において、伝統的に魚介の生食を好まない文化の中でも、カキだけは「生で食すべき高貴な食材」として別格に扱われてきた歴史がある。レモンやエシャロットソースを添えるのが伝統的である。
