選び方・調理法
選び方
身(足)が殻からはみ出すほど肉厚で、触れると力強く動くもの、吸着力が強いものが新鮮である。表面にツヤがあり、身が痩せていないものを選ぶ。一般に、殻の大きさに対して身が大きく、縁のひだ(上足)が小さめのものが歩留まりが良いとされる。
下処理
身を殻から外す際は、殻の薄い方(水管孔のない方)から専用のヘラや平たいスプーンを差し込み、貝柱を殻から剥がす。身を外した後は、塩を振りかけてたわしでこする「塩みがき」を行い、表面の汚れや黒いぬめりを取り除き、身を引き締める。口(クチバシ)には硬い歯があるため、V字に切り落とす。肝(わた)は砂を噛んでいる「砂袋」を除いて調理に用いる。
保存方法
乾燥に弱いため、濡らした新聞紙や布巾で包み、冷蔵庫で保存する。伝統的な手法として、水を含ませた炭を身に乗せて保存する方法もあり、これは適度な水分保持と浄化作用を期待したものである。長期保存の場合は、酒蒸しにするなど加熱後に冷凍するのが望ましい。
時期・特徴
国内分布
日本近海には主に4種が分布する。クロアワビ・メガイアワビ・マダカアワビは関東以南の太平洋側や日本海側に、エゾアワビは北海道から東北地方にかけて分布する。産地としては、岩手県、三重県(志摩)、長崎県などが有名である。
時期
クロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビは、産卵期を控えて身が充実する夏(6月〜8月頃)が最盛期とされる。一方、北方産のエゾアワビは、地域により異なるが冬から春にかけてが旬とされる。
栄養
高タンパク・低脂質な食材である。旨味成分であるグルタミン酸やアデニル酸が豊富で、グリコーゲンも多く含む。ミネラル類では亜鉛や銅の含有量が高く、疲労回復効果があるとされるタウリンやベタインも豊富に含まれている。
特徴
平たい皿状の殻を持つが、巻き貝の仲間である。クロアワビは身が締まり、磯の香りと歯ごたえが強いため刺身などの生食に適する。メガイアワビやマダカアワビは、加熱しても身が硬くなりにくいため、酒蒸し、ステーキ、煮貝などの加熱調理に向く。エゾアワビは小ぶりだが味が濃く、生食・加熱調理の双方に重宝される。
品種・由来
- 品種名:クロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビ、エゾアワビ
- 分類:古腹足目ミミガイ科アワビ属
- 学名:Haliotis discus discus(クロアワビ)、Haliotis gigantea(メガイアワビ)、Haliotis madaka(マダカアワビ)、Haliotis discus hannai(エゾアワビ)
由来
古くは「阿波比(あわび)」と記され、身が殻の片側に寄っていることから「片思い」の比喩(石に寄る鮑の片思い)としても知られる。マダカアワビは殻高が高い(眼が高い=マダカ)ことに由来。メガイ(女貝)は殻が平たく柔らかいことから、対してクロアワビはオガイ(男貝)と呼ばれることもある。
伝来
日本列島周辺の固有種、あるいは古くからの土着種であり、縄文時代の貝塚からも多くの貝殻が出土している。
歴史背景
古代より神事や朝廷への献上品として極めて重要視されてきた。身を薄く剥いて長く引き伸ばし、乾燥させた「熨斗鮑(のしあわび)」は、延命長寿の象徴として祝儀の贈り物に添えられる「熨斗(のし)」の原型である。現在も伊勢神宮では伝統的な製法で熨斗鮑が作られ、奉納されている。
備考
アワビの肝(トショウ)は「としろ」とも呼ばれ、独特の苦味とコクがある。春先のアワビの肝を食べると光過敏症を起こす可能性があるため(毒性成分ピロフェオフォルバイドaによる)、季節や部位の扱いに留意が必要とされる。
